それでは、シリンダーヘッドの取り外しです。さっさと外すぞ!と、いきたいのですが、車の中でも最も精密且つ重要な部分だけに、そう簡単にはいきません私のようなサンデー整備者が、つまずきがちなポイントがいくつもあります。 どうやら設計者の「そう簡単には外させないぞ!」という嫌がらせのようです シリンダーヘッド脱着における主な「嫌がらせポイント」は 1.トリプルスクエアのヘッドボルト 2.圧入されているガイドレールピン 3.チェーンテンショナー の3つです。 今回の作業の最大の難関とも云えるでしょう。 さあ、一体どうなってしまうのか?ご覧下さい! (注)右上の画像は、今回の作業のために購入した「koken製トリプルスクエア用ビット」です。 (280E 300EなどのW124も、共通部分が多いので参考になると思います)
まず、1番ピストンの圧縮上死点を合わせます。 写真の矢印の部分(ベルトテンショナーの奥)を覗き込みながら、クランクボルトをゆっくり廻してゆき、O/Tマークとインジケーターを合わせます。 この写真では、写りが悪くてほとんど確認できませんね。すみません。 もしも作業をされる場合、上死点の部分は非常に重要なので、私の説明をあてにしないで、マニュアルをしっかり読んで理解することをお勧めします。
圧縮上死点に合わせた後、カムシャフトの合マークも同時に確認します。 この状態のクランク位置、カム位置で取り外しを行い、同様に同じ位置で取り付けを行うことになります。 もしも間違えて取り付けると、ピストンとバルブが、かなり情熱的なキスをすることになります。 この画像はクリックすると、拡大画像になります。(写真中央に合いマークが見えます)
オイルパイプとロッカーアセンブリーを外します。 この部分は、外すだけです。 私はカムシャフトベアリングキャップにマジックで気筒番号を書き込んでしまいましたが、実は初めから 1から 4までの番号が掘り込まれています。(写真では、右下に"2"が逆さに写っています) ちなみにマニュアルにも、その旨の記載がありました。 マニュアルは、事前によく読んでから作業に写りましょう。 私のようにつまづいてから、初めてページをぱらぱらとめくるようではダメです。(苦笑) この画像だけ金属面がやたらと綺麗なのは、洗浄をした後に撮影した画像を使用しているためです。
オイルパイプとロッカーアセンブリーが外れたところです。 この後は・・・ ガイドレールピン チェーンテンショナー カムスプロケット カムシャフト ヘッドボルト ・・・と続きます。
これが、ガイドレールピンを抜くための秘密兵器 「ガイドレールピンプーラー」です。 ピンの穴に雌ネジが切られているので、そこにプーラーのボルトをねじ込み、ナットを廻せばピンが抜けていくという仕掛けです。 「ばね屋」というネットショップで通販購入しました。5600円でした。 ちなみにHaynesのマニュアルでは、全長の短いスライディングハンマーを使用して抜き取ることになっています。(そんなものどこで手に入るんでしょう?)
ガイドレールピンは、タイミングチェーンガイドを固定するために シリンダーヘッド前方より圧入されています。 画像は2本目のピンを抜こうとしているところです。 1本目のピンを抜いた穴にドライバー状の物を刺し込んでいますが、これは2本目のピンが抜けると同時に、チェーンガイドがクランクケースへ滑落するのを防止するためです。 ゆっくりとナットを回してゆくと、”あっと驚くくらい簡単に”外れます。
最終的にはプーラーを使用してピンを抜いたので、その部分のみ掲載をしていますが、恥ずかしながら白状すると、ピンを抜くためにはかなりの試行錯誤をしています。 まず、板金用の簡易デントプーラーを使用してみましたが、強度不足で役に立ちませんでした。 次に汎用のスライディングハンマーを購入し、試してみましたが、抜き取る方向にラジエーター類があるので、垂直に引き出すことができず、ねじ込んだボルトの頭が取れたりして上手くいきませんでした。 頭が無くなったボルトは、ドリルで穴を開け、タップでねじ山を立て直しながら削り取りました。 …これには、かなり参りました。 というわけで、プーラーの使用は「最後に一縷の望みをかけて」という感じだったのです。 皆さんは、こんな苦労はせずに、最初からプーラーを使用してください。 手の上に乗っているのが、抜き取った後の「ガイドレールピン」です。
次はチェーンテンショナーです。 外すときには外すだけなのですが、取り付ける場合は構造をよく理解しないで行うと、キケンが伴うような重要パーツです。 なんらかの原因でテンションがしっかりかかっていない状態で走行し、高速道路等で急にテンションがかかった場合、最悪カムが折れることがあるそうです。 恐ろしい話ですが、某ディーラーの親切なメカニックさんから聞いた話です。 画像のようにテンショナーのカバーナットを外します。 オイル漏れの影響で、ナットが透明感のある素敵な茶色にコーティングされています。 ところでこのボルト、 ・・大きいです。 32mmも あります。 そんなに大きなソケットは持っていなかったので、ソケットを買うことになりました。 と言うわけで、画像に写っているソケットは、Koken製のぴかぴかの新品です。
テンショナーは左のような部品で構成されています。 右上から・・・ カバーナット シールリング スプリング プランジャー テンショナーボディ ・・・です キャップボルトを外すと、中でテンションを掛けているスプリングが飛び出て来ます。 落とさないよう気をつけましょう。 今回はテンショナーボディも一緒に外れてきましたが、外れてこない場合は、大型の六角レンチか六角ビットを使用して外す必要があります。 この"六角"の大きさなのですが、これも・・・大きいです。 このために六角ビットを購入するとしたら、一生に二回しか使いそうにないくらい大きいです。 マニュアルにもわざわざ"大型"と書いてあるくらいです。 ここまで来ると、嫌がらせとしか思えません。 ・・・えっ、サイズですか? すいません、メモせずに組みつけてしまいました。 よかったらご存知の方、お教えください。
右側のでっかいのが、テンショナーを仮組みしたものです。 (たまたま一緒に写っている水温センサー類は関係ありません。お見捨てください。) あくまでも、部品がばらばらにならない為に組んでいるだけです。 前述の様な事故を招きかねないので、このままの状態でクランクケースに組み付けてはいけません。 なお、テンショナーボディーとプランジャーは、お互いが「一方通行」になるようにできています。 この説明だけでは「何のことやら」と思うかもしれませんが、実際に外された方は手にとって構造を確かめてみて下さい。 確実にテンションを掛ける仕組みに 「なるほどナー」と思うはずです。 構造と仕組みを理解して「なるほどナー」にならずに、このHPの説明だけで外したり組んだりするのは少々キケンですので・・。
さて、テンショナーが外れたので、ようやくカムスプロケット等を外すことができます。 画像左側のカムのお尻のところ(赤い矢印)にレンチをかまし、廻り止めをしてからカムスプロケット中央のカムスプロケットボルト(青い矢印)を緩めます。 ここで、廻り止めをせずにボルトを緩めようとするとクランクまで廻ってしまいます。 どうしてそんなことをわざわざ書いているかというと・・・ それは想像にお任せします。 もちろん私はそんなことはしていません。・・・・絶対に。・・・ハイ。 ボルトとワッシャーを外した後、スプロケットを手前に引いて(画像では右方向)カムと分離します。 この時点で、スプロケットとタイミングチェーンは、取り付け時の参考とするため、必ず合いマークをつけておきましょう。 また、スプロケットの向きもよく確認しておきましょう。 チェーンをつけたままの状態で、カムからスプロケットを分離すれば、容易にチェーンが外れます。 カムにスプロケットをつけたままで、チェーンを外そうと試行錯誤をしてはいけません。 チェーンのテンションが抜けたからといって、スプロケットから外れるほどの余裕はないのです。 もちろん私はそんなことはしていません。・・・・絶対に。・・・ハイ。 ちなみに画像ではロッカーアセンブリーを外した状態になっていますが ロッカーアセンブリーが付いた状態でカムスプロケットボルトを緩める方が安心して(安定して)作業できます。 先に緩めるだけ緩めておけばよいのです。
スプロケットとチェーンを分離したら、先ほどピンを抜いておいた状態のガイドレールも、ここでようやく取り外すことができます。 カム本体も外すことができます。 また、チェーンを万一落としたとしても、クランクケースの底まで落ちることはないと思いますが、やはり紐か針金か何かで張っておいたほうがよいです。 クランクケース内のスプロケットからチェーンが外れるのを防止するためです。
さて、後はシリンダーヘッドそのものを外すだけです。 ヘッドボルトを緩めればよいのですが、このヘッドボルトはトリプルスクエアという特殊な形状です。(画像参照) ・・・ここもやはり、嫌がらせとしか思えません。 M12サイズのトリプルスクエアビットを入手し、緩めます。 それにしてもこのボルト、・・・固いです。 どのくらい固いかというと・・
・・・こんなに長い延長パイプを使った程です。 何しろ規定の締め付けトルクが「一度50Nmで締めたあと、角度法で90度×2回」というのですから無理もありません。 とにかくなめないように気をつけましょう。 「バキッ」という感じで緩みます。かなり力を掛けることになるので結構怖いです。 今回は、なんとか無事に、すべてのボルトを緩めることができました。
ようやくシリンダーヘッドが外れました。 ヘッドをシリンダーに固定しているボルトは、10本のトリプルスクエアボルトだけではなく タイミングチェーンの辺りにも3本のヘックスボルトがあり また、水温センサーの辺りにも1本あります。 プラハンでヘッドをぺしぺし叩くのは、すべてのボルトを抜き取ってからにしましょう。 トリプルスクエアボルトだけを外した状態で、さまざまな方向からプラハンを振るったあげくに 「どうして外れないんだろう?」と悩むのは、サル以下です。 もちろん私はそんなことはしていませんよー。・・・絶対にです。・・・ハイ。
取り外したシリンダーヘッド(燃焼室側)です。 ここまでよく頑張りました。 赤飯炊いてもいいくらいです。 さて、燃焼室は意外と綺麗です。さしてカーボンはついていません。 プラグの下、つまり排気バルブの左横のあたりが最も汚れているというのが興味深いですね。 吸気バルブから見て、プラグの風下に位置してしまうので、このようになってしまうのでしょう。 燃焼にこだわる場合、プラグの電極の向きを混合気の流れに合わせるそうですが、そこまでするというのも、このような焼け具合を見ると判るような気がします。 (小さめの画像ですみません。より大きな燃焼室の画像は、次ページで掲載しています。) 「シリンダーヘッドの取り外し編」 いかがだったでしょうか? 自分自身ここまでの重整備は初めてのこともあり 「無事に取り外しできるのだろうか?」と、心配しながらの作業でした。 今回の作業のポイントは「けちけちせずに、必要ならば工具を買う!」ということでした。 二度と使うことのなさそうなビットやソケット、特殊工具を買うのは、もったいないような気がしますが、買わなければどうにもなりません。 作業している途中で、手持ちの工具では対処できないことがわかってしまうと、作業を中断しなければならず、何ともやりきれない気持ちで工具を手配することになりますが、「日曜大工」ならぬ「日曜整備」なのですから、そんなこともあるものです。 気持ちを切り替えて、工具を買いに行きましょう。 素人整備だからこそ、 "間に合わせ" ではない "きちんとした" 工具で確実に作業するというのは、重要な事だと思います。 「なめた」 「つぶれた」 「折れた」 というのも、ネジ山やボルトの頭ならばまだ良いのですが 自分の手や指でこれをやると、 ……痛いですから。 [ 整備情報 ]
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