■ エアクリーナーボックスの取り外し、改造について
吸気経路における長さ・太さなどの形状設計は、それぞれの自動車メーカーによって入念に計算・テストされ、あらゆるエンジン回転数とアクセル開度の組み合わせで、最大の吸気量、出力レスポンスとなるように設計されています。
マシンをシャーシダイナモに載せて、
アクセル全開を維持して最高出力を計測するような場合では、単純な吸気抵抗の軽減効果が、そのまま出力の増加となって現れますが、このような状態は、実走行では「アクセルベタ踏みで最高速アタック」をかける時以外には、ほとんどありえません。
実走行状態では、アクセルをベタ踏みで踏み続けることは非常に稀で、「パーシャル状態や全閉状態からのアクセル踏み込み」などが多いものです。
アクセル閉時には、高速の慣性を持ったエアが、突然行き場を失うことによって、「エアの反動」とでもいうような「空気のカウンターパワー」が発生します。
自動車メーカーは、このカウンターパワーをさらに反転させ、
吸気脈動として利用することによって、加減速を繰り返す実走行時のレスポンスが、最適となるように設計をしています。
(2サイクルエンジンの排気チャンバーが、未燃焼ガスを燃焼室内に押し留める役割を果たしているのと、同じような理屈です。)
そのような理由で、エアクリーナーボックスの容量や、サクションパイプの直径、長さ、などは、
各メーカーが計算と実走行を繰り返してたたき出した、「メーカーなりのベストバランス」の結実です。
一見ただの箱であり、パイプではあるのですが、それらを変更するというのは「メーカーなりのベストバランス」を崩してしまう場合があります。
「毒キノコ型」のエアクリーナーは、それらの吸気経路形状を変更することになってしまいますので、
「一般的・万人向けのセッティングではなくなる可能性がある」ことを承知の上で装着すると良いでしょう。
実際に「キノコ型を装着して、低速トルクが薄くなった」などの指摘も、よく耳にするところではありますが、見た目の派手さと、レーシーな吸気音は、「キノコ型」特有の演出ポイントです。
チューンナップではなく、ドレスアップだと割り切ることができれば、それはそれで非常に魅力的な部分でもあります。
「実」を取るか、「気分」を取るかはユーザー次第です。
ジムカーナなどでラップタイムを削りたい場合、低速ではエア圧のかかりにくい「ラムエア」などは、その本領を発揮しにくいでしょうし、「キノコ型」ではタイムロスになる場合も考えられます。
このような場合には、純正リプレイスタイプのフィルターで、より吸気抵抗の少ない製品の装着が推奨されます。
エアクリーナーの改造は、ユーザーによってはチューンナップであったり、ドレスアップであったりします。
自分の使用目的に合致した製品を選択すると良いでしょう。
ちなみに、「NAエンジンに、いかに多くの空気を送り込めるか」ということに関しては、「ホンダエンジン」の得意とするところであって、その素性の良さは、たくさんのモータースポーツ愛好家に認められています。
そのこともあってか、ホンダを愛好すると同時に、レスポンスの良いエンジン特性を重視するユーザーは、「毒キノコ型」ではなく、敢えて「純正リプレイスタイプ」を使用することが多いようです。
■ 吸気温度が高くならないようにする
同じ体積の空気であれば、
温度が低いほど密度が高くなり、結果として「空気の量が多い」ことになります。
このため、高温の空気は、「望ましい吸気」ということができません。
通常、フロントエンジン車の空気取り入れ口は、エンジンルームの熱気を可能な限り吸い込まないように、エンジンルーム外部に向けて設置されていることが多いものです。
「キノコ型」を取り付けた場合は、エンジンルーム内の空気を吸い込みがちになりますので、
低速走行が続く場合、熱気吸引によるパワーダウンを引き起こす場合があります。
対策としては、遮熱板などを設けてエンジンの輻射熱を受けないようにするなどがあります。
■ 二次エアを吸い込まないように
「二次エア」というのは
エアフィルターを通過しない「隙間から入った空気」のことをいいます。エアフィルターやエアクリーナーボックスの装着に不備があると、「二次エア」が入ることがありますが、異物混入の危険性だけでなく、
アイドリング不良などの原因にもなりえます。
エアフィルターやクリーナーボックスの装着に不備が無い場合でも、ブローバイパイプなどのゴム部品などは経年変化によるひび割れが発生することがあり、それに起因する二次エアが混入することもありえます。
■ エアクリーナーの「二律背反」
エアクリーナーの選択において留意しなければならないのは、エアフローを過大に優先した場合、エンジン保護能力が弱まってしまうように、
「何かを優先させると、その分何かが犠牲になってしまう」という二律背反を、良く理解しておくことだと思います。
ドラッグレース用に特別に改造された車両のように、
「エアファンネルのみ」で「フィルターなし」という場合でも、それが目的に叶っていれば、何の問題もありません。
このあたりを理解せずにエアフローを優先し続けると、結果として
「オイル上がり」を早期に誘発してしまうこともあります。
目の粗すぎるようなフィルターを使用する場合は、長期において、それがどのような結果をもたらすかを理解したうえで装着しましょう。
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2016年4月5日