さほど気にする程のことではありませんが、厳密にいえば、「マフラーに優しい走り方」、「そうでない走り方」というのがあります。
ポイントは、
エンジンが充分に暖まらないような「距離の短い走行」ばかりを繰り返さない。 と、いうことです。
エンジンが暖まらないような走行を繰り返すことが、なぜマフラーによろしくないのか、簡単に解説してみましょう。
排気ガス内の水分は、エンジンや排気系統が充分に暖まった状態では、ほぼ「気体」のままの状態で排出されます。
この状態では、
排気系統の内部に水分として付着することも少なく、結果として水分によるマフラー内部からの腐食も起こりにくくなります。
停車時に、いくばくかの水分が「タイコ」内に留まっていたとしても、マフラー本体が充分に暖まっていれば、余熱により速やかに蒸発し、大きな影響を受けることはありません。
しかし、排気系統が低温のままであると、燃焼室から排出されたガスは、エキゾーストマニフォールドやセンターパイプ、マフラーなどを通り抜ける間に急激に冷却されるため、
排気ガス中の水分はただちに結露することとなり、水蒸気を含んだ排気ガスとなって放出されます。
このような状態では、マフラー内壁にも多量の水分が付着することになります。
冬季で外気温の低い朝などは、水蒸気の含んだ霧状の排気煙が目立つだけでなく、マフラーから水を滴らせながら走行する車両が散見されるのも、このような理由です。
このような理由で、水温が上昇しきっていないうちに走行を終えるような、「短い距離での走行」ばかりを繰り返すことは、排気系にとって望ましいということはできません。
もちろん自動車メーカーも、排気管の腐食や耐久性には充分な配慮を持って設計、開発していますので、錆びによる穴あきなどを過剰に心配する必要はありませんが、
長期にわたって使用した場合、走行パターンなどの要因によって耐用年数に差が出てしまうことは、充分ありえることでしょう。
■ 消耗品としてのマフラー
■ タイコ・溶接部のサビ、穴あき
「マフラーに良い走り方・悪い走り方」の項目と重なりますが、マフラーを傷め、劣化させる主要な要因は「錆」です。
海沿いに住んでいて「塩害」がある、もしくは豪雪地域に居住しているため、凍結防止剤の影響が大きい。と、いうような場合を除いて、
一般的に使用した場合、排気系統において腐食が発生しやすいのは、「溶接部」と「タイコ部」です。
溶接部分は、他の部位に比べると腐食の影響を受けやすい場合が多く、長く使用していると表面に錆が浮くことがあります。
ただ、「表面に浮いている」程度であり、内部を深く侵食していないようであれば本来の性能に大きな影響を及ぼすことはありません。
どちらかというと
問題になりがちなのは、「タイコ」の部分の方です。
「タイコ」部は水分も溜まりやすく、また、さほど大きな強度は必要とされないために、部材の厚みもそれほどではありません。
このため、
腐食による穴開きは、タイコ部に集中することがほとんどです。
「タイコ」自体は、消音という役割を持った排気ガスの膨張室ですので、タイコに穴が開くと、排気音が大きくなり、場合によってはエンジンを始動させることがためらわれるような音を発生させる場合があります。
また、排気管に穴が開いた車両は、すなわち「整備不良車」となりますので、
道交法上においても、公道を走行することができません。
このような場合、DIY的な補修法としては、「ガンガム」に代表されるようなマフラー補修用パテを使用し、穴を埋める対処が一般的です。
ただ、このような場合に留意しなければならないのは、
「穴を埋めることができたとはいえ、腐食自体は全体的に進行している」と、いうことです。
最も腐食している部分にたまたま穴が開いただけであって、遅かれ早かれ「次の穴」が開いてくる場合が多いものです。
「マフラー補修用パテ」は、「とりあえずの一時凌ぎ」として、たいへん有用ではありますが、
新しいマフラーを調達・交換するまでの、時間稼ぎであることを理解した上で使用すると良いでしょう。
■ 内部吸音材の劣化
純正マフラーにおいて、必ずといってよいほど採用されている多段膨張型構造は、耐久性が高く、長い年数を使用しても消音効果が劣化しにくいものです。
一方、社外品のアフターパーツとしてのマフラーは、「抜け」を良くするために、
「直管構造+グラスウール」の構造を採用しているものも多数あります。
グラスウールは、細かい繊維の隙間が多数あるおかげで、高音域を中心とした吸音に効果的な素材ですが、
ススやオイルなどが多量に付着してしまうと、繊維の隙間が異物で埋められてしまうために、吸音能力が低下してしまいます。
このような理由で、「オイル上がり」や「オイル下がり」などの症状があり、オイル分を含んだ排気を出している車両や、吸気系統や燃料噴射のマッピングROMを操作したために、排ガスに「スス」が混じる車両は、消音効果にも悪影響を与える可能性もありますので要注意です。
ちなみに、同じ内部吸音材でも、発泡セラミックなどは、かなりの耐久性を持ち合わせていますが、吸音の特性がかなり異なりますので、同列に扱うことは難しいです。
■ 吊りゴムの硬化、ひび割れ
エキゾーストシステムは、ボルト・ナット等を使用してエンジンに堅牢に固定されています。
しかし車両後方では、ゴム製の部品を使用して、ぶら下げるようにマフラーを吊り下げている場合がほとんどです。
マフラーがある程度可動できるように、敢えて余裕を持って取り付けられています。
震動による応力を逃すことで、薄く軽量な部材でも耐えられるように、というわけです。
「吊りゴムが切れてマフラーが落ちた」というようなことは、そうそう発生するものではありませんが、
経年変化によってゴムが硬化、ひび割れすることは珍しいことではありません。
年数の経過した車両などは、何かのついでの際にでも、「吊りゴム」を交換しておくと安心です。
■ マフラー交換時の注意
新車や、さほど走行距離の伸びていない車両の場合は大して意識する必要はありませんが、
年数の経った車両の場合は、「取り外し」に要注意です。
エキゾーストマニフォールドの取り付け部分など、エンジンに近い箇所のボルト・ナットは、熱サイクルにより強度が低くなっていることが多く、
場合によっては錆でナットが痩せてしまっている場合もあります。
ただでさえ熱による「かじり」(熱による固着)が発生しやすい場所ですので、
下手にレンチを掛けてしまうと角をなめてしまう場合があります。
ボルト・ナットのトラブルは、発生してしまうと後が面倒ですので、できるだけ避けたいものです。
ボルトやナットが、熱や錆で傷んでいるようであれば、
「12角」ではなく、接触面積の大きな「6角」のソケットレンチを使用しましょう。
取り外したナットは、ガスケット(パッキン)と同様に、再使用せずに、装着時は「新品」を使用します。
ネジ溝には、かじり防止の為に、「スレッドコンパウンド」や「アンチシーズ」などの熱固着防止ペーストを使用することが推奨されます。
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2016年9月10日