マフラーの主要な役割は「消音」ですが、「消音」するためのさまざまな機構は、排気抵抗となってしまう部分もあるため、エンジンパワーに対しての「ロス」となってしまいがちです。
「消音しながらも、いかに排気抵抗を少なくするか」というポイントは、
マフラーの本質的な能力といって差し支えないでしょう。
■ 消音のしくみ
■ 圧力を弱める
マフラーでは、タイコ内に大きさの異なる多数の空気室を設け、排出ガスに一つ一つの部屋を迷路のように通り抜けさせることで、大気中に放出される前に圧力を弱め、消音させています。
卑近な例で申し訳ないですが、下腹に力を込めて「おなら」を一気に出すと大きな音になります。
ですが、「すかしっぺ」にして「徐々に排出」すると、一気に大量に出るはずのガスが、少しずつ連続的に放出されるために、ほとんど音がしなくなります。
このように、
高圧のガスも、圧力を弱めて連続的に排出することで消音することができます。
■ 位相の反転
「正の波」に対し、同じ大きさの「負の波」をぶつける(重ねる)と、お互いの力を打ち消すこととなり、波の高さが消滅します。
「音」も「空気の波」であるため、同様の特性を持つことから、この原理を応用することができます。
多段膨張室の容量が一定ではなく、少しづつ大きさの違うものになっているのは、
広い帯域の周波数を、効果的に消音するためでもあります。
■ 吸音材
グラスウールなどの吸音材を使用することにより、高い波長の音を中心に吸音します。
「吸音」とはいいますが、実際に「音を吸いこむ」わけではなく、グラスウール繊維の隙間を「音」が通り抜けることで、空気の震動エネルギーを、熱エネルギーに変換しながら減衰させる仕組みになっています。
低い音に対しては、さほど効果は無く、主にアフターパーツとしての社外品マフラーの吸音材として使用されます。
経年変化による劣化などを嫌ってか、ほとんどの純正マフラーでは、グラスウールを使用することなく、多段階膨張室などの「構造」によって消音しています。
■ 口径とトルク特性
一言でいってしまうと
「口径が大きいマフラーは、高回転寄りのセッティング」
「口径が小さいと、低回転寄りのセッティング」 と、なります。
回転数が2倍になると、同一の単位時間内に排出されるガスの容量も、2倍となります。
アイドリング回転数を仮に1500回転とすると、
7500回転時には、約5倍の容量を排出しなくてはなりません。
回転域にあわせて、マフラー容量を可変することができれば理想的ではありますが、そのような排気システムは、一部のオートバイのエキゾーストシステムのみに採用される程度で、一般的なものではありません。
結果としてマフラーの設計は、
「どの回転域のパワーを、最大限に発揮させるか。」という取捨選択を迫られることになります。
一概に言い切ることは難しいですが、
- 低速トルクを犠牲にして、高回転時の抜けをよくし、ピークパワーを求める
- 高回転時の抜けをそこそこにとどめ、低速のトルクを太らせる
- 回転数の全域において、トルクの低い部分が発生しないような設定にする
・・などのような方向性があります。
■ エアロパーツとの適合
エアロパーツを装着することが、一つのドレスアップとして定着してきた現在では、自車に装着しているエアロパーツと、購入予定のマフラーが干渉しないかどうかも、事前に確認する必要があります。
純正のエアロパーツやそれに準ずる製品については、マフラーメーカーも適合の有無を記載していたりしますが、ものによっては「適合未確認」としている製品もあります。
また、マフラーとスポイラーとの間に充分なクリアランスがあり、一見干渉しないように見えても、特定の周波数(回転域)で強い共振(びびり)が発生したり、渋滞などでマフラーの熱がこもるなど、複数の要因が重なった時などは、
エアロパーツに思わぬ影響を及ぼす場合もあります。
マフラーもエアロパーツも、それぞれに安価なものではありませんし、装着にも手間や費用のかかるパーツでありますから、事前の確認はしっかりとっておきましょう。
製造メーカーに明確な情報がない場合、ネット上の掲示板などから得られる情報も有用です。
自分の欲している情報が見つからない場合、掲示板で尋ねることもできますが、悪い意味での「教えてクン」にならないよう、社会人としての礼節は、わきまえた書き込みをしましょう。
■ 音の大きさ、音質
購入予定のマフラーを自車に装着した場合、
「どの程度の音量が発生するか」、「どのような音色になるか」は、非常に気になるところです。
「音色」に関しては、ネット上でもメーカーサイトなどを中心に「音声ファイル」を再生することで、おおよその感触を捕らえることが可能になっています。
ただ、「音量」に関しては、個人的な主観による捕らえ方の幅が大きく、実際に自分の耳で聞いて見なければ、なかなか判り難いのが現実です。
オーナークラブなどの集まりや走行会に参加すると、さまざまな改造・チューンナップを施した車両が会しますので、
興味のあるマフラーを装着している方にお願いして、音を聞かせてもらうと良いでしょう。
ゆっくり時間をかけて選んでも、マフラーは逃げません。
パーツ選びも楽しみのうちですから、じっくり調べて自分の車両と目的に合致したものを選択しましょう。
■ マフラーに使用される主な材料(金属)
■ ステンレス ■
鉄にクロム等を加えた合金です。
アフターパーツとして市販されているマフラーの、定番素材という感すらあります。
腐食に強いために、耐腐食用のメッキや塗装などを施さずに使用することが可能です。
含有する金属成分によってさまざまな種類があり、マフラー用途として多用される「SUS403材」を例に取ると、ニッケルが(8〜10.5%)、クロムが(18〜20%) の配合となっています。
自動車におけるステンレス鋼の珍しい採用例としては、「デロリアン」の外装鋼板として、塗装を施さずに使用されたことが挙げられます。
映画「Back To The Future」においては、特殊改造を施された「デロリアン」が、自動車型タイムマシーンとして登場しましたが、本物の「デロリアン」は、実はれっきとした公道を走行可能な自動車です。
ステン=錆、レス=否定。という意味からも、錆びない金属というイメージが定着していますが、
他の鉄系の金属に比較して、耐腐食性が格段に強いというだけで、決して錆びないというわけではありません。
海水などに浸しておくなど、塩化物イオンが大量に存在する環境下では、錆びが発生しやすいものです。
■ チタン ■
強度が高く、軽量で、高い耐腐食性能を持つ金属です。
強度は鋼鉄と同等でありながら、質量は鋼鉄の45%、ステンレス鋼の約半分であり、海水に浸しておいてもほとんと腐食しません。
ただ、
精錬に高い費用がかかることから、高価な金属であり、加工にも高い技術が必要となります。
そのため、オールチタンマフラーは、かなりの高額品となってしまいます。
■ アルスター材 ■
鉄の表面をアルミメッキした素材です。
どちらかというと廉価な素材であり、加工もしやすいため、
マフラー部はステンレス、パイプ部はアルスター材、というように、価格を押さえる目的で使い分けられたりもします。
■ スチール+クロムメッキ ■
オートバイなど、外部に露出したエキパイや、マフラーのテールエンドなどに使用されます。
クロムメッキ特有の、光沢のある金属表面が特徴です。
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2016年9月10日