中華ナビ vs 国産カーナビ(ディスプレイオーディオ)
中華ナビと国内メーカーのカーナビを比較した場合、どちらに優位性があるのでしょうか?
双方ともに、CarPlayやAndroid Auto対応型のナビを販売しています。
ですが、細かい部分をよく見てみると、OS(オペレーションシステム)に違いがあることが判ります。
従来型の組み込みOSを採用している国内メーカーに対し、ATOTOを始めとする中華ナビは、アンドロイドOSを主流としてきています。
また、中華ナビは価格優位性が高いですが、日本独自規格には非対応であり、地デジ対応やETC2.0との連携機能などは、ばっさり切り捨てています。
また、日本語のローカライゼーションも今一つです。
これらの違いは、カーナビを使う上ではどのような違いとなって現れるのでしょうか?
このページでは、「CarPlay/Android Auto対応ナビにおける、国内メーカーと中華ナビとの違い」について解説しています。
「地図内蔵型カーナビと、CarPlay/Android Auto対応ナビ(ディスプレイオーディオ)は、どちらがおすすめか?」というポイントについては、1ページ目の、ディスプレイオーディオ vs 地図内蔵カーナビ をご覧ください。
CarPlay/Android Auto対応ナビ、国内メーカーの対応状況
従来型の地図内蔵ナビに企業資源を注いできた国内メーカーは、CarPlay/Android Auto対応ナビには、それほど注力していません。
国内メーカー製品の発売年を見ると判りますが、
数年以上前に発売された製品が、未だに最新型の「CarPlay/Android Auto対応ナビ」として掲載されていることもあります。
「CarPlay/Android Auto対応ナビ」を発売しているメーカーも、ラインナップ数は、せいぜい数機種であり、全く発売していないメーカーも多々あります。
追記 (2023年04月)
現在では、国内メーカーの状況も多少変わって参りました。
後述のように、KENWOODは相変わらず1機種のみの対応ですが、アルパインは3サイズ x 2種類のラインナップを揃えましたし、パイオニアも対応機種を拡大してきています。
このように、CarPlay/Android Auto対応ナビに関しては、国内メーカー各社で対応が大きく分かれてきています。
CarPlay/Android Auto対応ナビを発売している国内メーカー
国内メーカーで、CarPlayとAndroid Autoに対応しているカーナビを製造・販売しているのは、以下の3社です。
Panasonic、三菱(ダイヤトーン)、イクリプス(DENSO TEN)の3社に関しては、従来型の地図内蔵ナビしか発売しておらず、CarPlay/Android Auto対応ナビは未発売です。
(調査時点:2023年3月))
KENWOOD - 1機種のみ、しかも古い
DDX5020Sは、KENWOOD唯一の「CarPlay/Android Auto対応カーナビ」ですが、2020年10月に発売されて以降、他に同様のスマホ連携タイプのカーナビは発売されていません(※1)
2020年モデルのまま継続販売しており、新型モデルも後継モデルも全く登場していません。
このあたりは製品開発サイクルが速く、常に新機軸を盛り込んでくる中国のATOTO(アトト)の後塵を拝しています。
ATOTOの場合、スタンダードモデルですらバックカメラの映像レートが720P対応となっており、720Pに達していないのは旧型製品と普及型のみです。
ドライブレコーダーとの連携も進んでおり、録画映像をナビ側の画面で表示、確認するのは、もはや当たり前の機能となってきています。
KENWOOD DDX5020S を見てみよう
※1
公式には、「DVD/CD/USB/Bluetoothレシーバー」という呼称であり、「CarPlay/Android Auto対応カーナビ」とはなっていませんが、ここでは判りやすいように、表現を変えています。
なお、当ページは2023年に加筆修正、及び内容確認を行っていますが、現時点でも新モデルが発売されていないか確認する場合は、下のリンクで検索してみてください。
KENWOODの『CarPlay / Android Auto』対応機種
現時点でのKENWOODの対応機種、および実売価格は、こちらで検索してみてください。
(タップするだけで最新状況が判ります。検索文字を入力する必要もありません)
ALPINE - CarPlay/Android Auto対応機種が揃ってきた
以前はそこまででもありませんでしたが、近年の
ALPINEは、CarPlay/Android Auto対応機種を揃えてきています。
『
ディスプレイオーディオ』という呼称を使っている、
Zシリーズと
Vシリーズがこれに相当します。
(右側に実売価格が表示されているはずですが、出ない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
Zシリーズには、11型ディスプレイの
DAF11Z
、9型の
DAF9Z
、7型の
DA7Z
があります。
Vシリーズですと、11型ディスプレイの
DAF11V
、9型の
DAF9V
、7型の
DA7
となります。
(Zシリーズはハイレゾ対応モデルであり、Vシリーズはハイレゾ非対応のスタンダードモデルですが、その分価格もリーズナブルな設定となっています)
また、国内メーカーである強みを活かし、さまざまなオプションパーツも用意されています。
別売とはなりますが、地デジチューナー、リアビジョン(後部座席用モニター)、デジタルパワーアンプなど、やろうと思えばいくらでもグレードアップすることが可能です。
地デジチューナーや、ETC2.0との連携性など、日本独自規格への適応が必要な分野に関しては、
中華ナビメーカーはすっぱり切り捨てて「非対応」としていますが、このあたりへの対応力はありがたいところです。
また、最初から日本車への装着をメインに開発されているため、インストールも容易で、日本語表示や説明書にも抜かりがありません。
(車種別専用キットも、多種多様に幅広く存在します)
このように、アルパイン製ディスプレイオーディオは、中華ナビと比較すると価格優位性ではやや劣るものの、機能的面を優先させたい場合には、充分おすすめの機種となり得ます。
ALPINEの『CarPlay / Android Auto』対応機種
現時点でのALPINEの対応機種、および実売価格は、こちらで検索してみてください。
(タップするだけで最新状況が判ります。検索文字を入力する必要もありません)
Pioneer - 好デザインでスタイリッシュ、ラインナップの拡充が伺える
Pioneerも徐々にではありますが、ラインナップを拡充中です。
ALPINEのように11、9、7インチという3サイズラインナップではなく、9インチと7インチの、2サイズ設定となっています。
また、近年発売されたモデルでは
物理ボタンを廃し、すっきりとしたデザインの全面タッチパネルに移行しています。
特に、
DMH-SF700
と、
DMH-SF500
に関しては、外観が秀逸で美しいデザインとなりました。
純正ランチャー画面も洗練されており、デザイナーの努力の跡が伺えます。
このPioneerの新型モデルと比較すると、前述のALPINEは、外装デザインでかなり差をつけられています。
ALPINE製ディスプレイオーディオは、画面下側に膨らみを持たせたデザインを採用しており、物理ボタンが付いていることも相まって、モダンな印象が感じられません。
(個人的な主観ではありますが、Pioneerの新モデルの方が、外観がスタイリッシュです)
DMH-SF700 / DMH-SF500を見てみよう
なお、DMH-SF500は、2023年春発売の新モデルですが、新たに「WebLink Cast」対応となっており、
スマホ画面をモニターに投影した状態で、モニター側で操作可能です。
(モニター側で操作可能という点が、単なるミラーリングとは異なります。アプリの安定性さえ問題ないようでしたら、非常に有用な機能です)
Pioneerのディスプレイオーディオは、一時期「
FH-8500DVS
」くらいしか見当たらない時期もあり、ATOTOを始めとする中華ナビにシェアを食われている感が否めませんでした。
ですが、近年ではこのように、反転攻勢をかけてきています。
筆者がATOTOの中華ナビを購入した頃は、国内メーカーのディスプレイオーディオは選択肢が非常に限られており、中国メーカーを選ばざるを得なかったのですが、今では状況が変わり、一部の国内メーカーが積極的に新製品拡充に努めており、魅力的なモデルを展開しています。
Pioneerの『CarPlay / Android Auto』対応機種を見てみよう
現時点でのPioneerの対応機種、および実売価格は、こちらで検索してみてください。
(タップするだけで最新状況が判ります。検索文字を入力する必要もありません)
ATOTO - 中華ナビの代表的存在
『ATOTO』(アトト)は、中華ナビの代表的存在であり、資金力と開発力で他の中国製メーカーに大きく差をつけています。
開発力が高いがゆえに、短期間に立て続けに新機種を投入することができており、時流に乗り遅れない貪欲さが特徴です。
ATOTO製ディスプレイオーディオは、
CarPlay/Android Auto対応はもちろんのこと、AndroidOSを主流としてきており、
あたかも車載タブレットといった様相を呈してきています。
語弊を恐れずに言ってしまえば、セルラーモデム(※1)とカメラ機能を取り去り、スピーカーを駆動するためのアンプと、ラジオ機能を内蔵した、AndroidOSの車載用タブレットと言っても過言ではないでしょう。
※1:S8の高級モデルにはセルラーモデム付きモデルも存在します。SIMカードを挿入すると、ナビ単体でもネットにアクセス可能です。
そのためスマホとの連携に優れているだけでなく、ディスプレイオーディオ単体でも様々な使い方が可能です。
例えば、Googleプレイストアから様々なアプリをダウンロードして、YouTubeやamazonPrimeビデオなどを楽しむことも可能です。
一方で、国内メーカー製品に比べると、
地デジやETC2.0との連携機能など、日本独自の規格には非対応といったデメリットもあります。
ですがそのようなデメリットは、価格優位性の高さという別のメリットとして現れています。
簡単に言うと、不要と思われる機能は思い切って切り落とし、コア機能に徹することで、
安さで勝負しているという感じです(実際に安いです)
なお、日本語のローカライゼーションはいささか不十分であり、説明文や表示の日本語は、(意味は判りますが)不自然なところも多々残っています。
インストール作業を自分で行う場合は、車のDIY作業にある程度慣れており、スマホやパソコンの設定なども、大抵のことは自力解決可能な人の方が良いでしょう。
(ちなみに、筆者が実際に装着・使用しているのは、ATOTOのエントリーグレードであるA6シリーズの第2世代型9インチモデル、「ATOTO A6G209PF」です。
地デジ・ワンセグチューナー を探してみよう
ATOTOナビには地デジチューナーが付いていませんが、汎用品の車載チューナーを後づけすれば良いだけです。
● 地デジ・ワンセグチューナー (amazon ランキング)
● 地デジ・ワンセグチューナー (楽天 ランキング)
純正ランチャー画面のデザインは、少々ダサい感じもありますが、この初期画面に戻るのは、設定が必要になる時くらいです。
普段の運転時は、(上の画像のような)CarPlay表示のマルチ画面にしていることがほとんどです。
他県など、道を知らない場所に来たときは、マルチ画面を解除して、マップを最大表示にしています。
9インチ画面+HD解像度(1280×720)は、広範囲を精細に描画でき、自車位置の把握もやりやすいです。
ATOTO製ディスプレイオーディオを見てみよう
ATOTOのマーケティング戦略
ATOTOの製品開発の速さは、特筆すべきものがあります。
開発スピートの遅い国内メーカーと大いに差が付いているところです。
具体例を挙げると、ATOTOは既にQLEDパネルを採用したモデルを多機種リリースしており、機を見るに敏と言えるでしょう。
このあたりは、国民性やものづくり文化の違いも感じさせられるところです。
国内メーカーはどちらかというと、完璧を求めて綿密なテストを経てから製品をリリースしようとする傾向があります。
(リスクを取るのを恐れるあまり、石橋を叩いて叩いて、なかなか渡らないタイプです)
一方の中国ATOTOは、「
製品をいち速くリリースし、常に最新機種を市場に投入し続ける」ことに比重を置いています。
それによって初期不良率が高まることがあっても、カスタマーサービスによるアフターケアで対処するという方向性を持っています。
(日本製品は「あらゆる面において、常に100点でなければ…」という感じですが、中国製品は「75点もあれば上出来じゃないですか?」という感じです。残りの25点分を高めることよりも、トータルでの売上利益を高めることに経営資源を割り振っており、良い意味で割り切っているとも言えます)
ディスプレイオーディオの市場は、既存のメモリーナビ市場を食い潰す形で急成長中ですので、製品の陳腐化サイクルも速いものがあります。
矢継ぎ早に新製品を投入し続けることで、最新のスペックで他社との差別化を図り、シェアを確保してブランドロイヤリティを高めていく。そのような戦略が功を奏しています。
少なくともこのままでは、国産のディスプレイオーディオは、日本製品であるという信頼性以外に、勝てる要素が皆無になっていくでしょう(いえ、既にそうなっているかもしれません)
「XTRONS」と「EONON」
「ATOTO」以外を見てみると、「
XTRONS」や「
EONON」もアンドロイドナビを製造しています。
しかしながら
EONONは製品バリエーションが少なく、
販売実績も少ないため
人柱になる覚悟が必要です。
XTRONSは、Android11や12など、OSバージョンの高い製品を投入したり、フルセグ地デジチューナーを搭載するなど、そこそこ頑張ってはいるのですが、いかんせん
価格面でATOTOに負けています。
さらに、これは重要なポイントですが、
製品に対する評価そのものが、全体的に低めです。
(amazonのレビューを見ると判ります)
このように、開発力の高さ、新製品投入サイクルの速さ、世界規模の販売台数、ブランド力などを総合的に判断すると、現状において
アンドロイドナビならATOTOと言って良いくらいの寡占状況となっています。
この傾向は、しばらくの間継続しそうな勢いです。
「XTRONS」と「EONON」を見てみよう
「XTRONS」と「EONON」のディスプレイオーディオは、基本的にAndroidナビです。
すべてCarPlayとAndroid Autoに対応しています。
国内メーカーはAndroidナビを作っていない?
現状では、国内メーカーはAndroidナビを製造していません。
CarPlayやAndroid Autoに対応させたカーナビを発売してはいますが、それはあくまでも既存の
独自OSベースのカーナビを、CarPlayやAndroid Autoに対応させたものでしかなく、
OSにAndroidそのものを使用した「Androidナビ」ではありません。
そのため、インターネットに対する親和性に乏しく、Googleプレイストアから自在にアプリをダウンロードして使うことはできません。
具体例をあげると、
YouTubeを視聴するために、わざわざ独自のアプリを介する必要があったりします。
ブラウザを自由自在に使えるものも少ないです。
Androidナビの場合は、あたかも車に装着したタブレットのように、ネットに対する親和性が高いのですが、国内メーカーのCarPlay対応ナビは、いずれもネット対応力に乏しいのが現状です。
言ってみれば、「
とりあえずCarPlayとAndroid Autoは使えるようにしておきました」というのが、国内メーカーのCarPlay/Android Auto対応ナビです。
元々ナビ用にガラパゴス化した自社製OSですので致し方ありません。AndroidOSのような汎用性にかけるきらいがあります。
追記
このネット親和性に関しては、近年かなり改善されてきています。
それでも、あたかもモバイル端末のようにとは、なかなかいかないようです。
実際のところ、Pioneer DMH-SF700の公式ページを見てみると…、
『専用アプリ「CarAVAssist」で、お気に入りのWebサイトをブックマークすれば、「YouTube」などの無料動画をクルマの中で迫力ある大画面と高音質で楽しめます』
…との記載が見られます。
わざわざ専用のアプリを導入し、ブックマーク登録しなければ、YouTubeすら視聴できないわけです。
次ページ:
画面サイズと解像度(ディスプレイオーディオ)
月寅次郎の本(著作)
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